J・ホフマンの可動式背もたれラウンジチェア 
Josef Hoffmann
1908
042ヨーゼフ・ホフマン(1870〜1956)は、ライト(p.22参照)やワグナー(p.24参照)、グリーン兄弟(p.26参照)らと同様、建物の外部と内部を含めた全体を1つの芸術作品として捉えた作家である。この理念を実現するために、ホフマンらは1903年に工芸品の共同製作所としてウィーン工房を設立。同工房は経営面でも成功し、当時の流行を大きく支配する。ホフマンがキャバレー・フリーダマウス(ウィーン)のためにデザインしたテーブルや椅子は、今ではレプリカが入手できるので、よく知られた作品になった。彼の代表作はストックレー邸(1905〜24)、プルケルスドルフ・サナトリウム(1904-05)である。写真の椅子はこのサナトリウム用にデザインしたもの。1908年にウィーンで開催された造形美術展覧会のモデルハウスに初めて出品された。このモデルハウスにはコーン工房で製作した家具も展示されている。このラウンジチェアは、1860年代にイギリスのウィリアム・モリスのスタジオで製作されたモリス・チェアがべ一スになっているのかもしれない。モリスモデル同様、ホフマンの椅子は、半球形の突起部を利用して背の勾配をうまく調節できるようになっている。しかし、ホフマンは、オーストリアで高度に発達した曲げ木技術を利用することで、イギリスの伝統的な安楽椅子を超越し、19世紀末のウィーンの芸術改革運動を支持した幾何学的デザイン作品を次々に発表していった。


【素材】着色ブナ材、金属部品

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス