P・べ一レンスの電気ケトル 
Peter Behrens
1909
0421910年。この年、ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエ、ワルター・グロピウスたちは皆、ベルリンのべ一レンス事務所で、スタッフとして肩を並べて仕事をしていた。建築、デザイン界に大きな影響を与えている偉大な作家、ぺ一ター・べ一レンス(1868〜1940〉に学ぼうとしていたのである。べ一レンスの活動範囲は、ドイツ・アール・ヌーボーからアーツーアンド・クラフツ運動、直線的なモダニズム、新古典主義まで多岐にわたる。彼はデュッセルドルフ工芸学校の校長時代の1907年、ベルリンのA.E.G社の経営者、ワルター・ラテナウの招きで同社デザイン顧問となり、近代建築史上、工場建築として高い評価を得た同社タービン工場の設計から、コーポレート・アイデンティティ、グラフィックの製作、時計、扇風機、ケトル、ランプのデザインまであらゆる分野のデザインを行った。企業がアーティストを工業デザイン顧問として採用したのは世界で初めてのことであった。写真のケトルは本体3種類、注ぎ口2種類、取っ手2種類、基部2種類が用意されており、全24タイプのケトルの製造が可能であった。板金を施したボディと藤を編み込んだ取っ手が、手工芸品であることをうかがわせる。彼が工業デザインの分野に取り組んだのはA.E.G社時代だけで、1907年以降は新古典主義に転向する。


【素材】真鍮、裂いた籐、べークライド

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス