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E・J・リュルマンのキャビネット
Emile-Jacques Ruhlmann |
インテリアデザイナー、エミール=ジャック・リュルマン(1879〜1933)は、1910年代に家業の塗装業を継ぎ、1911年からパリで自分の作品を発表し始めた。写真のような初期の家具はモダンというより、フランスの18世紀から19世紀様式の影響を受けており、1925年のル・ステイルの予兆となった。リュルマンの美しい作品は、様式、技術面で同時代のデザイナーには見られない独自の世界を持っている。写真のキャビネットは、希少な木材など様々な素材をふんだんに使い、見応えのある作品となった。ラッカー塗装を施した紫檀材の扉には花瓶のモチーフを多用し、その周囲に様々な輸入化粧板や象牙を使った豪華な花模様を丹念に象嵌している。また、アフリカのフランス植民地から入手した象牙が平坦に加工され、高さを揃えてはめ込まれている。椅子、テーブル、壁紙、ランプなど、リュルマンの家具はスタジオの職人達が製作したが、たいてい注文から完成まで1年を要したため、待ちくたびれてしまう顧客も多かった。1919年以降、塗装職人ピエール・ローランとの共同製作を開始。以降リュルマンの作品はデザイン的にはシンプルになったが、希少価値のある素材の使用、卓越した製造技術にはこだわり続けた。
【素材】ラッカー塗装の紫檀材、希少木材、象牙
100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス |
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