E・グレイの衝立
Eileen Gray
1922
042 アイルランドに生まれ、ロンドンで油絵とデッサンを学んだアイリーン・グレイ(1878976)は、D・シャルルの家具工房にアシスタントとして入り、漆器の知識を身につけた。1907年パリに移住した彼女は、1910年から装飾用のパネルや衝立、裕福な顧客向けの一点物家具を製作し始める。これと併行して、彼女は1907年以降、パリで漆器で有名なスガワラ・セイゾウに師事し、漆器職人として腕を磨いた。グレイ最初の大作は1913年から1914年にかけて製作された折たたみ式衝立「ル・デスタン」。これは、傑出した現代フランス家具を収集していたパリのファッションデザイナー、シャッタードゥセの依頼で製作された。彼女は、パリのロタ通りに服飾品仕立専門店を構えるスザンヌ・タルボットの依頼で、風変わりな寝椅子「ペルゴラ」(カヌー)の他に、衝立や家具も作っている。彼女は、殺風景なタルボットのアパートの玄関ホールの壁沿いに、漆を塗ったブロック状の衝立を置くなど、空間デザイン的試みも行っている。こうしたグレイの建築的抽象表現は、デ・ステイルの目に留まる所となった。彼女を高く評価したのは皮肉にもフランス人ではなくデ・ステイル派だったのである。彼女は、ジャン・デセールの紹介で、パリのフォブール・サントノーレ通りの店で、1922年から1930年まで一点物の家具(右の写真もそのうちの1点である)を売っていたが、第二次世界大戦を境に、彼女の名前は忘れ去られてしまう。彼女の作品が見直され、量産されるようになったのは、1970年代に入ってからである。そのとき、彼女は90歳を超える高齢になっていた。

【素材】ラッカー塗装の木材、アルミニウム


100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス