K・マレービッチとI・チャシュニク共作のカップ
Kazimir Malevich/Il'ia Chashnuk
1923
042 抽象画家としても有名なカジミール・マレービッチ(1878〜1935)は、ロシアのテキスタイル、建築的概念の構築、陶磁器の分野でも名を馳せた作家である。1917年ロシア革命以前の彼はヨーロッパ芸術界の一員であった。1915年以降、彼のシュプレマティスム(絶対主義/至高主義)前立体構成の概念は、西欧のモダニズムと共に発展していく。マレーヒッチは、フランス王立セーブル磁器製作所を模して設立されたロシア国営磁器製作所で、興味深い立体構成概念を形にした。国土は革命の後で極度に荒廃、工場で芸術的磁器が作られることはほとんどなかった。新製品を作るだけの予算がなかったため、残されていた帝政ロシア時代の半加工品に、保守的様式やアバンギャルド様式の装飾が施されることになったのである。遊び心はあるが、実用性に欠けたこのハーフカップは、当時では珍しい新作食器の1つである。マレービッチがデザインしたシュプレマティスム様式の器に、研究生のイリアーチャシュニク(1902-29)が装飾を施している。こうしたユニークな形のカップや装飾用の小立像は、西欧の展示会で販売された。マレーヒッチとチャシュニクは、1922年から1924年までこの国営工場で働いている。

【素材】磁器、エナメルで装飾


100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス