S・ムイユのフロアーランプ
Serge Mouille
1953
042 パリで銀細工師の見習いをしていたセルジュームイユ(1922〜88)は、一時、金属細工師で彫刻家のG・ラクロアの下で働いていた。戦争が終結した1945年、ムイユはパリに工房を作り、エコール・テザール・アプリケツで教鞭をとった。1953年に彼は、コンパニ・デザール・フランセ(仏芸術家協同組合)の美術監督、ジャック・アドネから、初めて照明器具のデザインを依頼される。ムイユが自ら「黒い目」と呼んだこれら一連のランプは、彼の最も有名な作品である。ランプのシェードは、同年公開のアメリカSF映画「宇宙戦争」の円盤の目を連想させる。映画の中で恐ろしい目から出る光線は手当たり次第に物を破壊した。繊細なパイプに取りつけられた、親しみを感じさせるランプの目は、薄い金属板に圧力をかけて人間の目の形に成型したものである。ムイユは、壁、テーブル、床、天井などの用途に合わせて、様々な組合せのランプを作っている。「目」のシリーズは、1950年代よりも現在の方が評価が高い。他にも、ムイユは学校からチュニジアの大聖堂まで様々なクライアントから依頼を受け、作品を製作した。1961年、彼は若い照明器具デザイナーを育てるためにSCMを設立し、銀をはじめとする金属細工の普及に努めた。

【素材】スチール

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス