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D・ドーマンと共同製作者によるボールペン「ジョッター」
Don Doman
1953 |
マサチューセッツのJ・J・ラウトを、ボールペンの父と呼ぶことができるかもしれない。1888年、彼は複雑な機構を持つボールペンの特許を取得し、続いてフランス、イギリス、アメリカで特許登録を済ませた。しかし、彼のボ一ルペンはどちらかといえば、非実用的な機構を備えたものだった。一方で、ハンガリーの活版植字工兼校正者である、ラズロ・ホセービロ(1889〜1985)と化学者のゲオルグ兄弟、技術者イムレ・ゲレはこれまでのモデルの長所を取り入れたものを考案し、1938年にフランス、1945年にアメリカでそれぞれ特許を取得した。しかし、第二次世界大戦の勃発によって生産開始が妨げられたため、1944年、ヒロは特許をイギリスの銀行家、H・G・マーティンに売却。さらにマーティンはトリノ生まれのMIビック男爵らに特許を売り渡した。1948年、ビック男爵はボールペンの部品製造に着手し、翌年、フランス初のボールペンが誕生した。一方、S・L・シュナイダー著『The
Incredible Ball Point Pen』(1998)によれば、使い捨てではない高品質ボールペンの開発を続けていたパーカー・ペン社は、1953年までに「ジョッター」を完成させており、100本の試作品が従業員に、また、3万本がプロモーション用に小売店へ配布されたという。価格は最も高いアメリカで2.75ドルだったが、このボールペンはたちまち人気を博した。「ジョッター」は当時のボールペンにはなかったインクカートリッジ交換可能なタイプで、インク自体はビックのボールペンよりも6倍長持ちした。この速乾性インクは光に当たると濃さを増し、文字のこすれや液滴れがない。また、ノックボタンを押すとカートリッジが90度回転し、これがボールとソケット部の摩滅を均一化した。こうして「ジョッター」は極めてよく設計されたボールペンという評価を得たのである。
【素材】ナイロン、ステンレス・スチール、真鍮。写真は1954年頃の製品。
100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス |
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