E・ノイズの電動タイプライター「セレクトリック」
Eliot Noyes
1961
042 1923年に発表された建築家ル・コルビュジェの『建築へ向かって』の建築論に感銘を受けたエリオット・ノイズ(1910-77)は、1930年代マサチューセッツ州ケンブリッジで、バウハウスの元教授であったワルター一グロピウスとマルセル・ブロイヤーの下で学び、2人の事務所で働いた。1940年代、彼はニューヨーク近代美術館の工業デザイン部門の初代部長を任されるという幸運に恵まれる。そして在任中、彼は独創的な展覧会場をいくつか作り上げた。戦後には、N・B・ゲッデスのデザイン事務所でIBMの電動タイプライターをデザインした。ゲッデスの事務所が閉鎖されたとき、IBMのT・ワトソンJr.はノイズをデザイン部に招き、オリベッティの設計手法でタイプライターのデザインに取り組ませた。1950年代後半、IBMの技術者たちは革命的なタイピング機構を開発し、ノイズのデザインしたボディに組み入れることに成功した。「ゴルフボール72」として知られ、後に公式名「セレクトリック」となるこの電動タイプライターは、互換性のある世界初の装着式ボール型タイプフェースを搭載し、リボンはカーボン・プラスチック製を用いた。重さは14kg。その造形的ボディラインはオリベッティのデザイナー、M・ニッツォーリ(p.126参照)の影響を強く受けていることは明らかである。「セレクトリック」のカラフルなボディは、オフィス機器としては、アメリカでは特に珍しいものだった。


【素材】研磨スチールに塗装、プラスチック

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス