O・ムルグの長椅子「ブールーム」
Olivier Mourgue
1968
042  オリヴィエ・ムルグ(1939〜)はスウェーデン、フィンランド、故郷フランスで学んだ後、1961年にデザイン事務所を開設した。活動範囲は、家具、ファブリック、玩具から環境設計まで多岐にわたった。  ムルグを一躍国際的に有名なデザイナーにしたのは、1968年のスタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」の中で、白一色の無味乾燥なホテルのロビーシーンに使われた、起伏のある赤い家具であった。彼は、柔軟性のある環境、多用途、伸縮性布地、フォームラバー、有機的形態にこだわった。こうした要素はすべて、彼の幼少時のニックネーム「ブールーム」の名を冠したこの長椅子に凝縮されている。最初のモデルは、ムルグの友人の体型を元に金属フレームの型がとられた。これは後にモールド・プラスチックの硬質厚板に作り直された。持ち運びができて軽く、スタッキングも可能なこの椅子は、室内で、あるいはカバーを取れば屋外でも使えた。  1970年に開催された大阪万国博覧会でも、彼は「ブールーム」を中心にフランス館をデザインしている。この人型の椅子はレストランや会議場で使われた。さらに、立て掛けて案内や方向指示のグラフィックを貼ると、あたかも人が注意を喚起しているように見えた。ムルグの1960年代の作品は、当時のフランスのデザインの高尚なイメージを和らげ、親しみやすいデザインとして一般に広める役割を果たした。


【素材】 ナイロン・ジャージー、ポルウレタン・アフォ一ム、ポルエステル・ファイバー

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス