R・サッパーの卓上ランプ「ティツィオ」
Richard Sapper
1971
042 リチャード・サッパー(1932〜)は生まれ故郷ミュンヘンで工学を学び、シュツットガルトのダイムラー・ベンツ社で2年間デザイナーとして働いた。1958年にミラノに移ってからは、M・ザヌーゾ(p.140参照)と共同で優れた作品を生み出している。単独でデザインしたデビュー作「ティツィオ」を見ると、彼が消費者向けの製品デザインに対する高い技術的知識を持っていたことがわかる。おそらく世界的にも知名度の高い卓上ランプの1つである「ティツィオ(彼の名前は?)」は、「調節アーム付き卓上ランプ」や「ルクソ」ランプを連想させるが、構造は全く異なっている。サッパーのランプは、1927年のブケーの作品(p.66参照)のように、スプリングの不要な平衡錘が付けられているが、ブケーと違って、水平方向には回転しない構造になっている。また、低電圧のハロゲン電線は細長い構造体の中に収められ、台座には重りを兼ねたトランスが入り、シェードには小さいが強力な電球が付けられた。アームは赤いアクセントのついたジョイント部で曲がり、あらゆる位置で固定することができる。「ティツィオ」には「フォルムより、技術と素材が優先される」というサッパーの信念が映し出されている。A・カルダーの宙吊りの「モビール」のように繊細で、安価なこのランプは、当初、黒のモデルだけが発売された。


【素材】アルミニウム、トランスが入る基部はABS樹脂、ハロゲン灯

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス