G・ペッシェのローバックアームチェア「シットダウン」
Gaetano Pesce
1975
042 ガエタノ・ペッシェ(1939-)は1958年から1965年の間、ベニスで建築・デザインを学び、1950年代後半になると、ドイツ、フランス、イタリアのアバンギャルド芸術家グループと共同で芸術への様々なアプローチを試みた。ペッシェは、ポップアート、キネティックアート、コンセプチュアルアートの動きと併せて1960年代後半のイタリアデザイン界に登場し始めた、合理主義や滑らかな輪郭線を拒否した。彼は1962年にプラスチック素材の、1968年には家具の研究を開始する。1968年、C&Bイタリア社がプラスチックを家具に利用した安価な椅子「UP」シリーズを完成させ、その中でも大きな肌色の脚が特徴の「UP7」はデザイン界にセンセーションを巻き起こした。彼は伊弾性建築宣言』(1965)の中で、消費文化において何が人間を物から疎外しているかを述べている。彼はその「虚無主義的」で退廃的な作品とは別に、写真のクラフチェア「シットダウン」をはじめ、ソファー、クッション付き椅子などを発表している。「シットダウン」には彼が追求してきたポリエステルと樹脂の研究成果が活かされた。また、合板の箱が使われ、キルト風に詰め物をした布地が箱を覆う形になっており、キルティングの中にはポリウレタンの発泡体が充填されている。数百年続いた、詰め物とスプリングを使った椅子作りの伝統は、「シットダウン」によって引導を渡されたのであった。


【素材】キルト風ポリエステル生地、ポケウレタンフォーム

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス