D・ウォーランスのテーブルウェア「デザイン10」
Donald Wallance
1978
042 ニューヨーク生まれのドナルド・ウォ−ランス(1901〜90)は、1940年代にニューヨーク大学とデザインラボラトリーで学んだ。軍需用品のデザインを手がけた後、1949年、妻シュ−ラと共にニューヨーク市近郊のクロトンにデザインスタジオを構えた。彼が手がけたさ作品の中では、アメリカのラウファー社向けのステンレススチール性テーブルウェアが最も有名だが、ドイツのポット社向けの製品デザインもしている。ウォ−ランスのプレスチック製テーブルウェア「デザイン10」は名前が示すように、ラウファー社向けの10番目の作品である。しかし、これが世界初のプラスチック製テーブルウェアというわけではなく、1969年にイギリスの敏腕デザイナー、デヴィッド・メラ−がプラスチック製テーブルウェアをデザインしている。メラ−がクロス・ペーパーウェア社でデザインしたテーブルウェアは、使い捨て商品であったが評判が良く、ユーザーは捨てずに洗って再利用したほどだった。1970年代にはケイ・フランクがサルヴィス社向けにデザインした、再利用可能なメラミン樹脂を使用したテーブルウェア「イージー・デイ」(ウォ−ランスのものと同様の形式で同年製作)など、様々な優れたプラスチック製テーブルウェアが発表されている。「デザイン10」の製作にとりつかれたウォ−ランスは最初に木製のプロトタイプを作り、次いで様々なプラスチック素材を使って、テストを重ねた。そして、ゼネラルエレトリック社のレクサンが耐久性に優れ、食器洗い機にも強く、染みがつきにくいことを発見する。こうして特殊な成形処理により、傷のつきにくい魅力的な艶消しの製品が完成した。この彩りに溢れたスマートなフォルムのテーブルウェアは、カジュアルなパーティーでよく使われた。現在は、これに似たフランクのテーブルウェアの方が残り、ウォ−ランスのものは姿を消している。


【素材】レキセイン(ポリカーボネイト樹脂)

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス