M・ワンダースの「ノッテッドチェア
Marcel Wanders
1995

042  マンセル・ワンダース(1963〜)は、1988年にオランダ、アーヘンの美術大学を卒業、翌年のPPT(オランダ郵政公社)から依頼させた照明デザインが最初の作品となった。そのとき彼は、ありきたりの無地の布を何層かに重ねたランプシェードをデザインした。そのシンプルさを追求した作品を「大量生産的」であると批判された彼は「むしろ伝統的なコンセプトに基づいた作品である」と反論した。1995年、ドローイング・デザインからドライ・プロジェクトへの参加要請が届き、技術本位の社会のために「愛情を感じさせる作品を作りたい」という夢を実現する機会を得た。マクラメ編みをヒントに生まれたアイデアは、ワンダースの言葉によれば「使い心地が良く耐久性があり、年代を経ても価値を失わない」椅子という形になって表現された。まず、芯にカーボンファイバー入りアラミド繊維を三つ編みにした紐で、アクラメ編みのように、とても椅子とは思えない形に編み上げる。これをエポキシ樹脂溶液に浸け、椅子の形を形成する8つの角を引き出し骨組みとなるフレームに引っ掛け、特殊な部屋で高温乾燥する。手工業と高度な工業技術の結合が、鉄のように固く頑丈な椅子を生み出している。この椅子は基本的には手工芸品だが、驚異的な数が生産されている。


【素材】カーボン繊維、アラマイド、エポキシ樹脂 

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス