日経MJ掲載|「レジ袋が開かない…」日常のストレスをデザインで解決。産学共同研究「すてるデザイン」の実践

2025年11月26日発行の『日経MJ』にて、プロダクトデザイン専攻Studio3の学生が取り組んだ、伊藤忠リーテイルリンク株式会社(IRL)との産学共同研究の成果が大きく取り上げられました。
日常の「困りごと」をデザインで突破する
紙面で紹介された制作物の一つは、指先が乾燥していても左右に引っ張るだけでサッと口が開く、新しい構造のレジ袋です。スーパーでの買い物中、「手が乾燥しているとき、レジ袋が開かなくて困る」といった経験はありませんか? 多くの消費者が抱える、日常の切実な悩みでありながら、「エアポケット」となっていた市場のニーズを掘り起こした学生の一人は、持ち手の根元を左右に引っ張るだけで自然と口が開く構造を発案・実現しました。 このレジ袋は、すでに大手スーパー等で採用されるなど、社会実装が進んでいます。
失敗作は3桁に。膨大な試作の先に見えた「答え」
この商品化の背景には、学生ならではの柔軟な発想と、それを形にするための徹底した試行錯誤がありました。 記事の中で「失敗を恐れず年数百件は試作」と紹介されている通り、学生たちの創出した数多くのアイデアを、IRL側が検証・具現化していく中で、商品化に至らなかった試作は数百に及びます。そうした膨大なトライ&エラーを経て、実用性とデザイン性を兼ね備えた商品が生まれています。
「便利さ」だけでなく、社会の意識もデザインする
本取り組みは、本学が2021年より推進している複数の企業との共創プロジェクト「すてるデザイン」の一環として行われています。 “つくる”ことで産業を⽀えてきたこれまでのデザインから、“すてる”を考えることでデザインを切り口に循環型社会へとアプローチする同プロジェクト。製品の物理的な形状だけでなく、ユーザーの体験(UX)やシステム全体をデザインすることで、資源循環と付加価値の創出を実践的に試みています。廃棄物という社会が抱える課題を、生活に寄り添う新たな価値へと転換し、この先のサステナブルな社会のあり方を日常から問い直しています。
デザインで社会の関心をつくる
学生たちは、こうした社会や企業が直面するリアルな課題に向き合い、デザインの視点から解決策を模索しています。次世代のデザイナーが持続可能な社会の構築にどう貢献できるかを学ぶ、多摩美ならではの実践的な教育の場となっています。
消費資材は生活のあらゆる場面で使われており、困りごとの解決や、衛生面への配慮など、便利さだけではない役割を担っています。本プロジェクトは、まず消費資材の新しい用途の可能性を探り、IRLの提供する消費資材への関心を高めることからスタートしています。その上で消費資材の素材やバリエーションの整理を行い、持続的に使われる仕組み作りを目指しています。
教育としての意義とサステナビリティ
指導にあたるプロダクトデザイン専攻の濱田芳治教授は、同紙の記事の中で、今回のプロジェクトの狙いと教育的意義について次のように述べています。
「コストや手間の削減といった生活資材の便利さを追求するだけでなく、サステナビリティーの観点から資材のあり方そのものを見直すことも目指している。学生にとって商品化を見据えた提案や試作ができる機会は貴重だ」 (2025年11月26日付 日経MJより)
身近な日用品における、消費者のちょっとした困りごとを解決するという課題から、社会課題解決と商品化のプロセスを学ぶ。 多摩美術大学では、今後も「すてるデザイン」プロジェクトなどを通じて、社会と接続した実践的なデザイン教育を展開していきます。