想い雲

中舎 康平

作者によるコメント

喧嘩をして仲違いをした二人の少女が、雲を介して互いの心情を察し合い、それぞれが想いを実行に移して仲直りを果たすアニメーション作品。仲違いする二人の少女は、価値観の異なる自己と他者(敷衍すれば個人と社会)の関係の象徴として、また、両者の間に介在して、ふたりの仲を取り持つ雲は、僕自身にとっての絵が持つ役割の比喩として表現します。音楽:Claude Debussy“Clair de lune”演奏:日向萌

担当教員によるコメント

メジャーなものと正面から向き合い、奇をてらうことなく正攻法で作品を作ることほど難しいことはない。しかし本作品は誰しも経験したことがあろう友情の物語を正面から捉え、見事な脚本力・作画力・演出力で描ききった傑作である。6分足らずの時間の中に、怒り、悲しみ、(小さな)笑い、喜びが満ち溢れ感情を揺さぶり続ける。雲を介在させた象徴的表現もアニメーションならではの表現特性をとても有効に使っている。ぱっと見、商業的なスタイル(という言い方がいいかどうかわからないが)をとりながら、確信的に自分の作風を確立した作者の芯の強さ、揺るぎなさに敬服する。はじめて制作途中のビデオコンテを見て以来、泣かされ続けた本作の完成には奇跡的な感動があった。涙!

准教授・野村 辰寿