父と母に贈る椅子

横田 素乃子

作者によるコメント

両親が、家で多くの時間を過ごすダイニングで使うことを想定しました。3年で制作したダイニングチェアのデザインを基に、父と母の座り方、癖を考え、座面や背面の大きさや角度を決めました。

担当教員によるコメント

一見、何の変哲もない一対の椅子。横田が両親のためにデザインしたダイニングチェアである。父親と母親のそれぞれの椅子の使い方、ダイニングでの過ごし方を緻密に観察し、実際に自宅で使用することを想定して制作されている。この一対の椅子(椅子で一対というのミソ)は同じ形に見えるが、父親と母親の使い方に合わせて、大きさ・プロポーション・細部の寸法が異なっている。その差異は、2脚を並べて初めて気づく程にささやかである。椅子は身体に最も近い家具であり、人は微妙な座り心地の差を敏感に感じ取る。両親のための椅子だが、それを超えて椅子の本質を捉えている。てらいのないデザインの中に横田の確かな力量を感じる。

准教授・橋本 潤