王子貝塚博物公園

河野 摩周

作者によるコメント

東京都北区の上中里二丁目広場では、かつて地下の貝塚層の発掘調査が行われた。埋め戻されて公園として利用されているこの場所を貝塚博物館・区営メディアテーク・公園機能を持つ複合施設として再設計した。

担当教員によるコメント

東京都北区王子の水にまつわる文化圏の東端部でありながら、線路にはさまれて打ち捨てられたような中洲状態の住宅地に貝塚の公園博物館を計画し、この地域全体の文化的な認識を高めていこうとする意欲作である。敷地には縄文時代の国史跡中里貝塚とその調査用トレンチがあるが、これを空間化して展示空間の一部とした博物館を設計した。トレンチはコンクリートの多角形でできた暗い空間から、光があわく落ちてくる空間、そして公園の芝生へと人々の歩みをドラマチックに導く。ここを訪れる人々が「かつてここに海岸があったのだ」とわかった瞬間、この土地の凡庸な日常は打ち破られ、想像力が解き放たれる。周囲の幼稚園や特老も一体化された公園として、これらの日常も楽しくしている。

非常勤講師・古暮 和歌子