感覚的に音を変える笛の研究

葛西 日向子

作者によるコメント

やわらかい笛の穴はひとつ。
つぶしたり、引き伸ばしたり、手の感覚で音をなめらかに操る、ふしぎな笛。

シリコンでできたこの作品は、ホイッスルの空洞の大きさの違いに着眼点を置いた楽器です。指で軽く押すと中の圧力が上昇し音が高くなり、伸ばすと音が低くなります。オカリナの発音原理を応用しています。研究の初期ではドレミを奏でるのに必要な空洞の大きさを、3Dプリンターを用いて1mm単位で検証しました。それから「笛をぷにぷに触って音を自在に変えられたら?」という仮説を出発点に様々な実験を行い、音が出る条件を満たすカタチ、大きさ、素材、製法を探りました。今までにないフシギな感触で、感覚的な音を奏でる、あたらしい笛です。

担当教員によるコメント

葛西日向子さんの卒業制作は、音を感覚的に奏でることのできる笛の提案である。笛と言ってもリコーダーのような体裁のモノではなく、よりシンプルなホイッスル的存在のモノと言えるだろう。本体を柔らかなシリコン素材でつくることで、伸ばしたり縮めたり曲げたりと、形状変化により音の高さをコントロールできる。葛西さんは笛の基礎研究として、ドレミの音階をホイッスルで表現することにもチャレンジしており、3Dプリンターで笛の内部形状を少しずつ変えて出力し、音の高さを確かめながら進めていた。一連の笛づくりを通じた積み上げていくようなプロセスからの学びは、考えた仮説を形にしていく上でとても大事になるデザイナー必須のスキルだと考える。

教授・濱田 芳治

作品動画