大谷石の研究

松岡 杏樹

作者によるコメント

夏から大谷石職人の工房へ通い指導を受けながら石を削った。石の表面加工のバリエーションが少ないことから新たなテクスチャーを模索し、道具で削る際にできる意図しない形に着目したプロダクトを製作した。デザインされた形と端材を構成した、家具と彫刻の中間的作品。

大谷石は栃木県宇都宮市大谷町を中心に採掘される。内装に使われる青緑色が残る大谷石と、地元でみる風化し黒ずんだ大谷石。同じ石でもイメージの違いがあることから興味を持ち、建材だけではない魅力を伝えるものを作りたいと思い研究に取り組んだ。

担当教員によるコメント

実家近くの大谷石の採掘場に興味を抱き、松岡杏樹さんは大谷石を卒業制作のテーマとした。松岡さんの作品で興味深いのは、大谷石の魅力の掘り下げ方にある。傾向として石工の職人は加工の綺麗さや均一さを大事にするため、表面を同じ表情で平滑に仕上げようとする。大谷石は経年劣化すると表面が砕けて粗い表情になっていくが、松岡さんはその粗い表情に魅力を感じて、切り出したばかりの大谷石の表面を、経年劣化した大谷石の表面のようにわざと粗している。これは加工作業のほとんどを松岡さん自身で行っていたために見出した魅力だろう。いわば新品のデニムにエイジングを掛けるように、石の表面に凹凸を作り出すことで、真新しい緑がかった大谷石では見ることのなかった石の新たな魅力を惹き出している。

教授・濱田 芳治

  • 作品名
    大谷石の研究
  • 作家名
    松岡 杏樹
  • 作品情報
    技法・素材:大谷石、アルミ棒(補強パーツ)
    サイズ:ローテーブル=H370×W1070×D635mm/スツール=H450×W270×D270mm/ハイテーブル=H725×W630×D390mm/オブジェ=H380×W365×D330mm
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