景色になる家具

井上 湧滋

作者によるコメント

ベンチ、ラウンジチェア、ハイスツールという高さの異なる3つの座面を一つに構成した家具。それぞれ違う座り方が出来るだけでなく、サイドテーブルや棚としての役割も果たす。その自由度の高さが、家具を空間の構成要素の一つから、心地よい空間そのものへと変化させると考えた。

担当教員によるコメント

井上湧滋くんの「景色になる家具」は空間の中における、人とモノの関係を探った作品である。
空間に専有のモノとしてあるのではなく、使い方や置き方までも人に委ねる。
線材と面の構成は空間での抜け感や軽快さを生むと同時に、構造が直接表層に現れてくるため、意匠とのバランスは幾度も検証を行う必要がある。また、写真ではなかなか見えてこないが、線材同士の接合方法も工夫が凝らされており、着目する点である。井上くんがこの作品に対して、幾度の検証と細部のこだわりを持てたのも、3年次から関わっていた家具メーカーとの共同プロジェクトの経験が大きい。
共同プロジェクトを通して木材加工や構造に興味が高まった事が井上くんのモノに対する解像度を高めている。

講師・尾形 達