モンゴル文様プロジェクト

文様シネマ

モンゴル文様プロジェクトの一環として、「アイヌと北方モンゴロイド」「モンゴ ル 文様の帝国」「縄文 メアンダー文様」の3つの映像作品を制作しました。

モンゴル装飾文様シリーズ01

アイヌと北方モンゴロイド

アイヌの人々は、北は樺太から、北東の千島列島、ロシアのカムチャッカ半島、北海道を経て、南は本州北部にまたがる、オホーツク海地域一帯に居住していた民族です。 アイヌの人々には、独自の言語であるアイヌ語があります。アイヌの人々は、独特の文様を多用する文化をはぐくんできました。彼らが使う調度品や、刀などの持ち物、そして服装には文様やシンボルが入れられてきました。
 アイヌ文様は、古くから、男性による木彫、女性の手仕事による刺繍によって、親から子へ、家系や地域で受け継がれてきました。そのため、アイヌの人々の文様は、地域や家庭によって特徴が異なります。また、つくり手によっても違いがあります。現在では、アイヌ文様をアレンジしたマークを用いた日用品が作られています。そのような刺繍や彫刻にも、地域性ごとの系統とともに、作り手独自のオリジナリティーを見ることができます。
 北海道二風谷の生まれのアイヌ刺繍家川上裕子さんから現代のアイヌ文様についてお話を伺いました。
(出演:川上ひろ子氏、制作協力:にむ倶楽部)

文様アーカイヴシリーズ02

モンゴル 文様の帝国

豊かな大地に恵まれたモンゴルは、古代から遊牧民族により育まれてきた豊かな文様、隣接する国々や宗教文化の影響を受けた文様が入り混じる「文様の帝国」です。文様は遺跡、建築装飾、宗教儀礼、生活用品、衣服だけでなく、祝祭の場を華やかに装飾します。モンゴルの代表的な文様「ソヨンボ」は国旗や国章にシンボリックに表され、仏教寺院では八つの吉祥文様が建築装飾や儀礼用品にみられます。なかでも幾何学文様の「ウルジーへー」や「アルハンヘー」は信仰だけでなく生活の場の至る所でみられます。そして祭典に集まる人々は馬を伝統的な馬具で装飾し、国内外の様々な文様を取り込んだデールで正装します。またモンゴルの楽器や音楽にも文様が奏でられています。2022年夏、研究メンバーらがナーダム祭典の時期にウランバートルとカラコルム(ハラホリン)で調査したモンゴルの文様の諸相を紹介します。

文様アーカイヴシリーズ03

メアンダー文様、起源への旅

およそ15,000年前に起きた地球規模の気候変動により長い氷河期が終わり、日本列島は温暖湿潤な気候に変化します。海水面の上昇により大陸から切り離された北海道でも、落葉広葉樹林が拡がり、森や海の恵みを利用した生活が始まりました。1万年もの長期にわたり安定した社会を支えたのが、土器の発明です。表面に縄目の文様がつけられていた土器から名付けられた縄文時代は、その名のとおり「文様の文明」と呼んでもよいくらい、多様で複雑なデザインを出現させました。
 この映像作品は千歳市にあるキウス周堤墓群から出土した、一本の石棒を取り上げて、これをユーラシアの先史時代のなかで眺めてみる試みです。縄文時代後期に作られた石棒のメアンダー文様は、遠くウクライナの地で発見された、マンモスの牙製の腕輪にも見られる、もっとも古い文様のひとつです。ウクライナから北海道へ来たアンナ・カルボフニチャさんが石棒を手にして、縄文の美に出会いながら、文様の遥かな地平を紹介します。
(出演:アンナ・カルボフニチャ、茅原 明日香他 協力:千歳市埋蔵文化財センター、さっぽろ芸術文化研究所 他)