The forest

新保 花奈

作者によるコメント

以下は卒業制作作品「The forest」の向かって右側ピンク色の壁面に青色の文字で記したものです。(一部意図的に読みにくく記した箇所は…(省略)…しています)「私を置いていかないで」その一声から始まる私と森の駆け引きはもう約4年になります。そして未だに完結はしていません。その子と相対した時、腕を引かれたような気がしたのです。あの青く固いヒラヒラが私を誘ったと思っていました。だから私はついて行こうとすれ違い様に振り返ったのですが…()…それだけではなかった。その奥にある私と似ている何かがこちらに向かっているではないか。私はあまりの怖さに腕を振り解き…()…そのつもりでした。しかし、その足は全くあれと同じものになっているのです。…()…私と森は似ているのです。…()…

担当教員によるコメント

「The forest」と題された卒業制作は、深い森から想像力の根源を探ろうとしていて、幾何学的形体や抽象的なフォルムで構成されている。初期のインスタレーションでは壁に対する垂直性の意識が目立ったが、最近は床への水平性の意識へと展開されている。色彩も鮮やかで自然とは少し異なるイメージを醸し出している。ピンク色の壁面に青色の文字で「私を置いていかないで」と記してあるのは、作者と森の駆け引きを表している。その駆け引きはもう4年も続いていて未だに結着がついていないという。森には親近感を持ちながらも、こちらに向かってくる怖さにさいなまれるらしい。抽象的で有機的なフォルムには植物のような優美さがみられ、インスタレーション全体からは自然への怖れや崇高な思いが表現されている。

教授・木嶋 正吾