The land for sale

川端 もくは

作者によるコメント

家が取り壊されると住宅街には隙間が生まれる。そこは空き地となり売地とされしばらくの間、人々に放棄される。人が手放した途端に逃げ込むように植物たちはやってきては立ち上がり、広がり、束の間の時間と空間を生きている。大地を拓き風景をデザインする人間がいないところでその風景を描いているのは植物なのだ。人間と植物、この主体と客体の終わりのない入れ替わりがこの世界を作っている。ガーデンとは囲まれたエデンを意味するが、私はコンクリート壁に囲まれたその売地に、町の喧騒からほんの少し距離をとって佇んでいた多摩川の河川敷に、15世紀フラアンジェリコが描いた受胎告知の庭を見たのです。身近なあらゆるモチーフを左は一点透視図法的に、右は抽象性をもって繋ぎ合わせ二つで一つの画面を構成した。

担当教員によるコメント

家が取り壊された後に生まれる空き地。
人の手が入り込まなくなった空間と時間を使って植物が人に代わってその場所の景色を作っていく。川端さんはそのコンクリートに囲まれた世界に、または本人が佇んだ多摩川の河川敷に、囲まれたエデンとして、フラアンジェリコの受胎告知の庭を見たと言います。
そんな二重三重の世界が、透視図法を効果的に使うことで人為と自然(じねん)が緩やかに入れ替わるような不思議な空間として表されており、非常に興味深い作品になっていると思います。多少強引なところも見られますがそれも含めてこれから川端さんがこの作品で見られる一定ではない視点や画面内の時間をどう扱うのか、一つずつ思考を重ね、限られた空間に広がる世界を、その外側の世界も含めてどう表現してくるのか。構想が現代の課題にどう耐えていくのか、続く作品が非常に楽しみです。

教授・加藤 良造

  • 作品名
    The land for sale
  • 作家名
    川端 もくは
  • 作品情報
    技法・素材:植物染料、岩絵具、水干絵具、タルク、墨、木炭、パステル、三彩紙
    サイズ:H1303×W1620mm(2枚)
  • 学科・専攻・コース