ろんど1, ろんど2
吉田 有希
作者によるコメント
『薔薇の名前を忘れても、その薔薇の色や形は残る。
犬の名前を忘れたら、その犬は色と形になっていく。
地球は丸いので、平面の地図は噓をつく。
作品そのものが作品の従うルールをやぶっていく』
手作りの額の絵、地図が描かれた絵、犬のぬいぐるみ、王冠、イスやテーブル、ツリーなどで構成されたインスタレーション。
それぞれ、「Free~(好きに~していいよ)」と書かれている。
地図を作るとき、必ずどこかを縮めたり、引き伸ばす必要がある。自分のいる場所を正確に知るための地図という道具には、必ず間違いがある。
鳥のように世界を上から眺めて、確かに自分の家が、町が、あることを確認する。
同時に、行き慣れた場所から家に帰るのに、わたしたちは、地図など、必要ないのである。
担当教員によるコメント
巨大な平面絵画から手のひらに乗る小物、既製品の玩具など、あらゆる媒体でとりとめもなく繰り広げられるインスタレーションは、全力で他者と関わりを持とうとする吉田有希の冒険の旅である。密度の濃いユルさ、無造作な注意深さ、無邪気な切なさをたたえて語り掛けてくるその冒険の使者たちは、いつの間にかお利口さんになってしまい疑いを持つこともなくそつなく生きている私たちに思い出させてくれる。不完全であることの自由を。
ネイルがきれいに乾く前に、プリンが上手に固まる前に、彼女は完成することに抗う勇気と優しさを携えて新たなる地平の旅に出るであろう。
教授・吉澤 美香
- 作品名ろんど1, ろんど2
- 作家名吉田 有希
- 作品情報『ろんど1』
素材・技法:サテン布、アクリル、石膏粘土
サイズ:H1150×W940mm
『ろんど2』
素材・技法:サテン布、アクリル、ラメ
サイズ:可変 - 学科・専攻・コース
- カテゴリー