Escape journey

堀内 涼雅

作者によるコメント

卒業制作という一つの節目に「私自身の居場所」について考えたいと思い制作した。
この作品のモチーフは母校の教室をドット化したものだ。
日本画は伝統に重きを置くばかりに保守的で固まった一定の印象を鑑賞者に与える事が多い、日本画を描く者として、日本画のこれからを見据えた挑戦を現代的な手法で試みた。

教育実習を母校で行った秋頃、
当たり前のような話だがその場所にあの頃の私は居ないのだと感じた事が居場所を考えるきっかけだった。
居場所は時を経る毎に移りゆくもの。
今居る大学にも新しい世代が入り、私たちの軌跡は少しずつ薄れてゆく、かけがえのないこの時間の中に逃避行してしまいたい。
そんなわがままな等身大の自分の気持ちを絵の中に投影した。

担当教員によるコメント

作者は、卒業にあたり「私自身の居場所」を描いたとコメントしていた。時の経過で、環境も共に過ごす人も変わっていく中、自分が今いる空間、時間、軌跡全てを折り込めようとしたのだろう。今時のドットを使った手法だが、とても叙情的な印象がある。マス目一つ一つに粒子のある岩絵具を丁寧に塗り込めた画面は、液晶画面で見るドットとは違い、色々な感情を発信し、作者がいる場所の情報と作者の心情を伝えて来る。学生生活を送った教室の風景だが、ここで作者が感じていたものが的確に表現されている絵だと思う。

教授・宮 いつき

  • 作品名
    Escape journey
  • 作家名
    堀内 涼雅
  • 作品情報
    技法・素材:岩絵具、土絵具、墨、アクリル絵具、吉祥麻紙
    サイズ:H2740×W3660mm
  • 学科・専攻・コース