生命の奇

峯野 加菜

担当教員によるコメント

おおよその人が現実の重さに自らの言葉を見つけられず、直視することをはばかり隠れ見るようなテーマで峯野加菜は作り続けている。「奇形胎児」「緊縛」である。もはや現代においてタブー禁忌はその役割を終えたのだろうか、と考えてしまう。何が日常で非日常であるか、清浄と穢れなどの対立構造がもはや境界領域と共に曖昧になっているからであろう。彼女はこの二つのテーマに「肉体の美しさと危うさ」を見て取っているようである。独自に習練した素材の加工技術によって極限の形として言い表そうとしている胎児や、シンボルとしての「生命の樹」の借用によって作品化を試みている。そこに、雑駁な日常と生のままの奇怪を越える、現代の禁忌のメタファーとなりうる可能性を感じる。

教授・井上 雅之