ペイン

三木 美里

担当教員によるコメント

この作品を成立させているすべての素材、そして素材との関わりから見えてくる行為、作品のどの部分を見ても素材という言葉を超えて生命の息吹を感じるのである。例えば、うす紙に描かれた絵、内蔵されている音、素材と素材を接続するために使われる金具やモノを支え移動させるキャスターまでもが、その息吹を感じるのである。通常、接続部分に使われる金具などは、その使用目的が露呈してしまい、一素材であることの域をでることが出来ない。しかし、三木の作品は素材のすべてに生命が宿るのである。三木のコメントに「この星に生まれたものでその存在をつくる」とある。このような意識があるからこそ成せることなのだ。もちろんそれは容易に出来ることではない。何故なら人間は身勝手に他者を他者と思わず、自分の思いどおりにコントロールしてしまう生き物であるからだ。他者をこの星に生まれたものとして受け入れるには、他者の個としての意志を見出さなくてはならない。それは目には見えないものである。三木は、その領域に足を踏み入れることが出来る希有なアーティストなのである。

准教授・栗原 一成