まとう理由

緒方 瞳子

担当教員によるコメント

変化する外界から身体を保護する機能をはじめとして、衣服は人が普段思う以上に複雑な役割や意味をもっている。緒方瞳子さんは、衣服が人の心理へ与える影響に着目し世界の服飾文化に目をむけ、兜、花魁の装飾、王侯貴族の襟飾りなどを調査した。それらの過剰ともいえる装飾から着想を得て、立体作品を編み上げた。求める形ができるまで、素材と編み方の研究を根気よく積み重ねた。もともとの技能に実験と努力が加わることによって「心を補うための道具としての衣装」を完成度高くまとめることができた。作品を自ら纏い表現した写真もイメージ豊かである。身体をめぐる装飾への緒方さんの着眼点は興味深く、さらに思索を深め、卓抜した編みの技術による新たな表現が期待される。

教授・川井 由夏