窓は互いに重なり合っている

有本 理美

作者によるコメント

きっかけは、窓の写真を連続してスクリーンショットした様子に惹かれたことです。

コピーペーストされた写真や動画が別のウィンドウにもあり、位置や大きさが異なりながらも連なったり重なったりすること。壊れていくような距離感。
そして、他のイメージとも色や形が類似していることで関係を持っていくさま。あるいは、そのように見えること。それらの共通点と落差。
画面上で、次々とイメージが出会い、増殖していくような感覚。

これらをそのまま作品にできないか、という試みが本作となっております。

担当教員によるコメント

コンピュータで仕事や、ネットサーフィンしているとき、日常的にはあまり意識されないかもしれないが、そこでは複数のウィンドウが開いては閉じ、スクロールされながら、無数の画像やテキストが次から次へと切り替わり、立ち上がっている。それは単に日常的な作業にとどまらず、実は我々の映像体験の今日的なあり方として捉えることができるのではないか。有本理美の作品はそこから出発する。彼女はその映像体験における感覚的なあり様を見事にすくい上げ、それらを統一的な意味に押し込むのではなく、様々な意味、記憶に開かれた関係性において再構築しようとしている。彼女の問題意識は、巷で見られる写真の因習性から離れて、まさにデジタル時代の画像のあり方に向けられている。ここに新しい写真表現の可能性が大いに秘められているとして高く評価したい。

教授・大島 成己