デザートみたいな人生

オウ ホウ

作者によるコメント

近年、デザートの価格がますます高騰しています。美味しさよりも見た目にこだわる傾向が強まり、原材料の品質も犠牲にされています。多くの人がSNSなどでシェアする美しいデザート写真は、食欲をそそります。味のギャップがありますが、多くの人が購入しています。これは外観が消費者の価値判断に大きな役割を果たします。色彩やデザインは製品の魅力を示し、消費者の購買意欲に直結します。
この作品では、人がデザートのように、自分の商品価値を見出すために努力していることを表現しました。この作品を見た人が、人間の本質的価値が、外観では測れないもので、優れているとか劣っているとかそういった尺度にならないことを伝えたいです。

担当教員によるコメント

お城のように華やかなケーキや何層にも重ねられたケーキが、ターンテーブルの上に置かれている。1カットされたケーキの断面からは、まるで誰かの部屋が垣間見えるような光景が拡がる。これはもしかしてネズミ達の世界なのだろうか?外見の華やかで可愛い様子とは裏腹に、内部は別の世界へと繋がっているのだろう。
私達が、日々受け取る情報の大部分は、視覚によるものであると言われている。日常生活は視覚情報に強く影響をされており、それは社会の多くの価値観の形成にも寄与しているとも言えよう。作者は、このような視覚を通じて植え付けられた規範に対して、さらりと言葉を投げかける。その語り口は、饒舌でないにせよ軽やかで、観る者を惹きつける不思議な魅力ある作品となっている。

教授・古谷 博子