HEIKO思考

土川 大貴

作者によるコメント

多くの事象や情報が溢れる世界で、日々絶えず思考を行う。そして義務、責務を重複して抱えてる時並行して思考を行う。一つの思考をする中で別の思考が生まれ、積み重なり、段々と手に負えなくなっていくという自身が体験した事を作品として制作した。
思考の根幹となる器官の脳をモチーフにした作品を制作した。

担当教員によるコメント

土川は3年の夏、投薬治験のバイトをした。心身ともに疲弊したという二週間の経験はしかし、その後の作品の礎を築いた。「彫る」「盛る」などの彫刻技法とは違ったアプローチで身体を構造的に捉えること。身体を再現する素材として、あえて直線的に製材された垂木を用いること。土川は3年後期からそれに熱中した。一作目には「手」、さらに「足」、「歯」、そして卒制で「脳」。単にあちこちの部位を作っただけのように見えるが、実は手と脳では決定的に意味が異なる。自分で視認できる「手」は、いわば異素材によるデッサンである。しかし「脳」はどうか。「脳を垂木で再現する」そんな妄想を抱く者が近くにいると思うだけでおそろしい。しかも完成度は格段に上がっている。

教授・高嶺 格