夕日の丘葬斎場

今井 龍一郎

作者によるコメント

今回私は斎場を計画する上で、「残された人々」に焦点を当てました。それは私が、「死」を終わりの象徴であると同時に始まりなのではないかと考えたからです。
人々が「死」に直面し、最も身近にそれを感じた時、人々はこの先を生きていくことについて考えるのではないでしょうか。
であるとしたならば、「葬儀」という儀式の、いわゆる区切りと捉えられる地点で人々に寄り添う建築を考えることは、この先の人生の始まりの一端を担うことができるのではないかと私は考えています。

担当教員によるコメント

昨今、若者の死への興味が以前より高いように思える。それには自死に対する興味が不可分なのは大変残念なことであるが、他死への興味は浮世の建築とは格別の建築にこそできるポテンシャルに気づかせてくれる。
今井君の卒業制作のテーマは火葬場である。避けては通れぬ出来事を受け止めるため、宗派を問わず式次第が建築化するような与件の整理が必要だ。
刹那的時間での興味喚起に慣らされた若者にとって、この与件整理には持久力が求められる。この作品はその与件整理の過程を少しも疎かにすることなく、風光明媚な土地にリアルな提案として着地させたことを高く評価したい。惜しむらくは、表現が極めて矮小化されていることだ。これは彼だけではなく、他の学生にも見られる傾向である。大学生活にコロナの影響が直撃したせいなのかもしれない。

教授・松澤 穣