テンセグリティ凧

奥澤 諒

作者によるコメント

今作は建築と凧の構造を組み合わせた時に生じる相乗効果の研究である。従来の凧は強い風の中でしか飛ばせなかったり、着陸時や飛行時に部材に加わる衝撃は剪断力として凧の破壊に繋がっていた。そこで、建築構造であるテンセグリティを凧と融合させ新たな可能性を模索した。テンセグリティ構造は圧縮材と引張材で構成された最軽量の構造体であり、外力を全て軸力方向に変換する特性を持つ。また、剛性が低いことにより突然の衝撃を吸収する余地をもつ。この特徴により、従来の凧と比較して軽量化と耐久性の向上の両方を達成した。他にも初期張力による幾何剛性である為、風が弱い時でも安定して飛行する事も可能だ。様々な考察と実験を繰り返し、上記の機能と造形美を追求した。その過程を含めた研究が私の卒業制作である。

担当教員によるコメント

テンセグリティの安定性は幾何剛性に拠って成立している。剛性の低さゆえ実構造物への採用は多くないが、テーブルや棚といった家具、彫刻などのアート作品は無限に存在する。しかし、その軽量化された構造体が最も効果を発揮するのは、空中への浮遊においてである。
かのグラハム・ベルが行ったスペースフレーム構造の凧による航空実験をさらに軽量化されたテンセグリティ構造の凧が再現し、超越していく可能性を秘めている。
テンセグリティの定義は「テンション材の海の中に浮かぶ圧縮材との集合体」。彼の作品群はその集合体そのものを空中に浮かばせる挑戦の記録となった。

准教授・犬飼 基史

作品動画

2分17秒