ゆらめくかたいかたち ー連歌を応用した設計プロセスの提案ー

俵 颯太

作者によるコメント

 私たちの心情や求めるものは常に変化する、流動的なものだと考えている。 しかし、私たちを取り巻くものは流動性を持っているのだろうか。 建築を設計する際には、幸せの指標を設定し、その願いによって形が作られる。一つの願いから生まれた形は、流動的な私たちにとって、時に窮屈な形になっているのではないだろうか。
 私は、連歌という文芸を設計プロセスに応用して住宅を設計した。 建築を9つのエレメントに分解し、これらを3人で順番に設計する。
  一つの意味性しか持たなかったはずのエレメントは、他者のエレメントとの関係性の中で、その意味性は思いもよらない方向への変化が起こる。
 こうして建ち上がった建築では、使う人が次の詠み手となり、建築というかたいかたちの意味性は流動的に変化していく。

担当教員によるコメント

設計の主体への疑問が根底にあるように思う。与件がありクライアントの要望があるなかで設計は行われる。
唯一設計者の主体だけが揺るぎない様に思えるその設計自体も部分やプロセスにおいて解体してしまおうという試みである。
一つの家の設計を数人の同級生に委ねる。そこには「連歌」からの着想が大いに役立っている。
SNSによる価値観の海に主体が溶け出してしまっているのではないかとの確認作業の一環であるとも言えるのではないか。
これからは同級生の役割をAIが担ってくれるだろう。そしていつしか自ら以上に自分らしいAIの作業を見届けているに過ぎない自分になる。
そんな末恐ろしい世界を予感させる作品である。

教授・松澤 穣

  • 作品名
    ゆらめくかたいかたち ー連歌を応用した設計プロセスの提案ー
  • 作家名
    俵 颯太
  • 素材・技法
    素材=ケント紙、コピー用紙、マット紙
  • サイズ
    1/50模型=H210×W450×D450mm(9点)/1/30模型=H380×W850×D350mm(1点)
  • 学科・専攻・コース
  • 担当教員