ブリコロールのおくそこ

井原 瑞葵

作者によるコメント

満開の桜並木や紫陽花畑など、人々が植物の満開の一瞬を楽しんでいるのは明らかである。自然豊かな地で育った私は、日常の中にある植物のふとした瞬間に楽しみを感じている。多くの人が華やかな満開の瞬間だけでなく,普段目を向けていなかった植物にも少し意識を向け、より植物を身近に感じてもらえるような作品を目指した。

自分でも気がつかないほど一瞬で完結する、自分の脳内で起こる「見立てを通じた植物とのコミュニケーション」にあえて目を向け、分析し可視化した。これにより、新しい植物との関わり方を伝えたいと考えた。
作品を通じ、多くの植物との対話を疑似体験し、見えないコミュニケーションの世界に思いを馳せてみて欲しい。

担当教員によるコメント

制作者の井原瑞葵は、観光公害に悩まされているという京都の出身である。この作品は、京都の中でも自然豊かな地域で育った彼女にとって、常に身近にあった植物、その深く静かな楽しみ方が垣間見れる写真集であり、詩集であり、同志を誘うための入門書であり、見た目に映えるものばかりが発信・拡散されがちな、今日のSNSを中心としたマーケティングコミュニケーションに対するアンチテーゼである。写真の流派・スタイルとしての「決定的瞬間」は、普通は息を呑むような緊張感を伴うものだと思うが、こんなにも緩やかな決定的瞬間もあるのだなあと感心させられた。

講師・清水 淳子講師・高見 真平