植物標識絵画

くすもと ののか

作者によるコメント

私は美術館という場所に足を運ばなければ見ることのできない作品、また美術館に足を運ぶことで半ば強制的に美術作品を見させられるという環境に少し違和感を覚えてる。「美術はなぜこんなにも日常と切り離されているのか、もっと身近なものとして存在していても良いのではないか。」このような考えから私は「日常と美術作品との境界線を曖昧にさせる」というテーマを自分の中で掲げて作品制作を行なってきた。
植物標識絵画は、標識がまるで植物のように至るところに生えていると感じたこと、標識の記号部分がまるで抽象絵画のようであるという考えから” 標識・植物・抽象絵画” の3 つの要素を組み合わせたインスタレーション作品である。

担当教員によるコメント

「道路標識」「絵画」「植物」という一見関係の薄い3つの言葉が、どのように結びつくだろうか?という問いに対する答えの一つを、この作品は与えてくれる。抽象表現主義の作家を中心に、フランク・ステラのシェイプドキャンバスなども参照しながら、過去の抽象絵画を模写し、標識として制作している。さらに作者は、この標識絵画を植物として屋外で自然に発生し、増殖するものとして捉えている。都市の中で道路交通を整理するため具体的な意味を担う「標識」を、自然環境の複雑で大きな循環の一部としての「木」へと抽象化することなのかもしれない。またそれは、モンドリアンが「木」の抽象化を経てマンハッタンの「道路」を記号的に描くようになった軌跡とも関係しているようにも思える。

准教授・谷口 暁彦