河童の家

芝田 日菜

作者によるコメント

この映画は、不動産業を営む家主が、長らく放置していた茨城県牛久市にある家の点検に訪れたことをきっかけに始まる、幽霊たちと家の営みを描いた作品だ。

撮影場所となった家は50年前に建てられたもので、当時住む予定だった大家族がそれぞれの理想を可能な限り詰め込んだ家であるため、住居としてはとても不自然な構造をしている。私は大掃除やロケハンをする中で実際に起きた出来事をベースに、劇映画という表現を通じてこの家を映し出すことを探求した。

担当教員によるコメント

建てられて間もなく放置され、誰も住むことなく時を重ねた豪奢な一軒家。小川や湿地が広がり、古くから水辺の妖怪・カッパの目撃談や伝承が残る茨城県牛久市。異なる時間と空間が交錯することで生まれた、静謐でありながらどこかユーモラスで少しホラーな映画。屋敷をめぐる光と影、湿気や雨が織りなす空気感は、音響学的であり、気象学的な表現に満ちている。ミニマルに動き胡瓜をほおばる役者たちが、小川芋銭の『河童百図』に描かれた、愛嬌のある不思議な生き物の生まれ変わりのように見えてくる。自主映画祭『立川学生映画祭』を主催し、イメージフォーラム映像研究所の卒業制作展で最優秀賞を受賞した作者が、休学期間を挟みながら二年をかけて丹念に作り込んだ力作である。

准教授・久保田 晃弘