身体の境界について考える
河野 七穂
作者によるコメント
服は本来、身体とは切り離された「もの」にすぎないはずだが、着ている間はその人の体と融合し、身体の一部のように機能することがある。そのような性質から、衣服を用いて身体を拡張することを考えた。
スキャナーで服の形を歪ませ、その形を元にパターンを引いて服を製作する。
極端に大きな服は、身体の一部として引きずったり持ち運ぶ必要があった。また、1つの服を複数人で着る場合、服を着るときに他人と力を合わせる必要がある。さらに、1人の動きが他に影響を与え、引っ張ったり体重をかけたりと、身体を預け合う感覚が生まれる。
衣服によって身体の境界を曖昧にすることは、他者に想像力を働かせ、自身の存在や他者との関係性を見つめ直すための新たな手がかりとなるのではないだろうか。
担当教員によるコメント
身体と衣服、そして空間の関係を再考させる河野さんの作品は、袖や丈を意図的に肥大化させ、複数人で共有する「身にまとう建築」とも言えます。個の輪郭を超えて広がる布は、着る者同士の関係性を変容させ、人と人の距離感や関係性に新たな視点を投げかけ、衣服の持つ社会的・空間的な役割を問い直します。その形態は着る人の動きや集まりによって様々な空間を生成し続け、建築が人を包み、他者と共有する時空をうみだすように、本作もまた布の構造によって空間を編み、人と人・物質・空間の関係性をデザインする試みです。これは衣服を媒介とした集合的な身体の探求であり、身体と環境の関係に新たな視点をもたらす挑戦的な作品です。
准教授・湯浅 良介
- 作品名身体の境界について考える
- 作家名河野 七穂
- 素材・技法素材=Ultrasuade®
- サイズサイズ可変
- 学科・専攻・コース
- カテゴリー
- 担当教員