小海線をあるく
須澤 葵
作者によるコメント
小海線は別名八ヶ岳高原列車と呼ばれる小淵沢駅から小諸駅までを結ぶ単線のディーゼル車で、八ヶ岳を周遊しながら北上していく。今回では小淵沢駅から野辺山駅の区間に注目した。かつては観光列車として栄えていたが、今では車で巡ることが前提の地域となってしまっている。線路沿いに楽しめる要素が十分にありながら利用者が減少している理由は、特徴的な地形にあると考えた。八ヶ岳の形状に沿っておうぎ型に広がった人々が住まう場所は、谷や尾根に分断され、水源に沿って縦方向に展開している。主要の道路もそれに伴って敷かれており反対にそれを繋げるように走っている線路に対して並行している道はほとんどない。この縦の人の流れを横向きにしていくことで列車の利用者を増やし線路沿いに栄えていくように促しこの地域の可能性が広がっていくと考えた。そのきっかけとして線路を歩くことを提案する。駅を起点にするのはそのまま、車ではなく電車と徒歩という交通手段を取りやすい状況づくりを行い、いままでにないこの地域の楽しみ方を展開していくことを計画した。
担当教員によるコメント
八ヶ岳連峰の山麓を走っている小海線。その名前の由来はロマンにあふれています。現在、JR線では最も標高の高い場所を走る小海線ですが、この地域は今から3000万年前には海の底にありました。その後、地殻変動によって隆起して陸地となったのが300万年前。人類が住み着いたのは1万5000年前。そして1100年前、八ヶ岳の水蒸気爆発による土砂が千曲川を堰き止めて湖沼(海)が形成されました。その中でも小さい海は「小海」と呼ばれ、水が引いたあとも地名として残ったのです。そんな「地球の風景」を小海線の車窓から眺めるだけではなく、「あるく」ことで心と身体で感じるという提案です。米粒大に描かれた人がいるスケッチには、この地球では人間なんて本当にちっぽけな存在なんだという、本作品の核心となるメッセージがこめられています。
准教授・田嶋 豊
- 作品名小海線をあるく
- 作家名須澤 葵
- 素材・技法素材=MDF,アクリル他
- サイズ模型=H2400×W1800mm他全4点/スケッチ=A2サイズ他全6点
- ジャンル模型 スケッチ
- その他作品情報敷地:JR東日本小海線小淵沢駅-野辺山駅間
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