Tone

西田 彩恵

作者によるコメント

染めることで生まれる色の現象は、そのモノの別の姿を映し出す。木材の生命活動を利用し、色を吸わせることによって年輪の硬軟から色の違いが生まれている。染めた後に表面を削ることで、青色の中から様々な色味が木目の変化とともに現れる。
様々な染料で実験した結果、色素の粒子が細い万年筆のインクが木材を染めるのに適していた。吸収される粒子が、木材の繊維の密度によって異なるため、密度の高い部分にははっきりとした赤みがかった光沢が現れる。また、多面体で面の角度を調整した造形は、生まれる木目、インクの吸収率の違いを生む。その中には、私たちがまだ見たことのない色彩がほのめいている。

担当教員によるコメント

木は木材という材料になっても、そこには生物の特性を残している。西田彩恵さんの作品「TONE」は、そのことを強く意識させる。木の中には無数の道管がある。それを通して水分や栄養分は根から幹、そして茎や歯まで届けられている。この道管を用いて藍の万年筆インクを毛細管現象に拠って吸い上げ、木材を着色する。一言で「道管」と言っても、木の種類や部位、また個体差によって様々な形や表情を持つ。それは木材の切り方に拠っても変わり、西田さんは、試行しながらその表情を探し、作品の魅力に繋げている。素材について改めて顧みる視点を提供する、美しく意味のあるデザイン提案だと思う。

教授・濱田 芳治