あの向こうは…

WANG Mingyu

作者によるコメント

「愛の欲望」をテーマにしたアニメーション作品。人を好きになると、もっと知りたく近づきたいという気持ちが生まれる。しかしこの間に明らかになるのは、その人自身ではなく、自分の欲望の形かもしれない。自分の欠如やなりたい姿は、他人の中で映している。では、ただ何かが欠けている気持ちで、愛の欲望が生まれたのか?求めているものはその人と関係あるの?もしくは欲望自体は幻覚なのか?
手を伸ばせば相手の肌に触れることはできても、自分の疑問には触れられない。他人は完全に異なる未知の存在だからだ。一体になりたいと願うほど、相手は「あの向こう」へと無限に遠ざかる。あの向こうは何かあっても何もなくても構わない。愛の欲望は、その手のように、永遠に満たされぬまま伸び続けるのだろう。

担当教員によるコメント

官能的に描かれた、手を伸ばして届きそうで届かない彼との距離。夜のツーリング、木立を抜けて川原にたどり着く道すがら、女性主人公の彼への想いがイメージ的に描かれる。触れたいという気持ちが象徴的に現れては消える……。3年次に感覚的なアニメーション表現を探っていたオウミョウウは本作で一気に開花したように思う。ラスト、草むらに寝転ぶ二人、彼へと手を伸ばす主人公……手を伝う蟻、怪しく伸びる植物、眼球とまつ毛と血管、咲き乱れる花といったイメージが交錯し、主人公の想いと欲望をアニメーションが得意とするメタモルフォーゼ的イメージ表現で、切なく見事に描き切っている。進学する彼女のこの感覚的な表現がこの先どう進化していくのか?とても楽しみにしている。

教授・野村 辰寿