夢芽のなる木

千葉 万由子

作者によるコメント

私は絵に対してあまり前向きでない大学生活を過ごしてきました。そんな日常で心の拠り所となったのは植物という生き物たちでした。
植物を描いている時間は心が穏やかになれる。楽しいと思える。植物をモチーフとして絵を描くことで不安な気持ちやマイナスな感情を消化しているといった行為とも言えます。画面と向き合い続け植物を絵描くことで中に引き込まれ溶け込んでいく。非日常的なところへと向かって行く感覚さえもありました。
卒業制作では画面に対する強いアプローチや自然に生まれる流れを意識し、自分の落ち着く居場所である植物、自然たちの姿を絵描いています。

担当教員によるコメント

 樹齢を重ねた巨木の幹が、画面中央斜め方向に勢いよく描かれた大胆な構図。動きのある描写にまず圧倒される。それに加え、豊かな色彩表現が印象深く、2メートルを越す大作の前で一気に作品世界に引き込まれる事になる。立ち上がって見える伸びやかな筆のストロークと、踊るような筆致が共に心地よく、千葉はこの作品を通し、主題である「生命のほとばしり」を余すことなく描くことに成功したのではないか。その一方で作者は在学中制作に際し、常に振り切れないわだかまりを抱えていたと言う。卒制に至るこの4年間は長く辛い時間だったのかもしれない。しかし、そこに身を置き過ごした事は何一つ無駄にはなっていないと思う。産みの苦しみを知っている者だけが味わう事ができる、やり遂げた後のこの上ない充足感。描くことで解放される「表現の醍醐味」を、千葉は今噛みしめているに違いない。

教授・武田 州左