9)浮遊する風船

浮遊への願望

空中浮遊への欲望は、まず神話のメタファーによって解消され、次にダヴィンチ等の観念的機械の探求を経て、20世紀の科学実験で実現される。しかしながら、20世紀の強力なエンジンによる飛行は「風の谷のナウシカ」の優雅な飛行とは程遠い。

水中の酸素を液化して、体全体に循環させる血液システムを獲得した魚類は、やがて、水中浮遊のための浮袋を肺に進化させて、陸上動物となります。
しかしながら、水中を自由に遊泳していた時の快感をあきらめきれない恐竜は、跳ね回り、もがき回って、走りました。
その結果、恐竜は、肺気嚢の数を増加させ、連続呼吸を可能としたので、空中を飛び回る鳥となりました。
一方、空中浮遊をあきらめた恐竜は、やがて手足を退化させ、一つの右肺しか持たない蛇となりました。

岩影に身をよせて、それらを様子を観察していたネズミのような哺乳類は、ただ、浮遊の妄想に引き蘢るだけでした。
そのために、哺乳類の大脳皮質は過剰に肥大化して、狂気の生物となり、芸術とか宗教とか学問とかで脳細胞の科学反応を発散解消する人類となりました。

大きく膨らんだ風船を見る時、心が和み楽しくなります。風船は、アナーキーな気分に人の心を浮遊させる、不思議な力をもっています。風船の形には、豊満な中にも、程良い緊張感があります。
地球の重力に捕われて、地球の表面で生活する人類は、無重力への浮遊を夢見てきました。神や天使は自由に空を跳びます。ボッシュ1505年作「聖アントウスの誘惑」の瞑想の場面には、魚に乗って優雅に空を行く男女が描かれています。

1783年に、人間が初めて空に浮上した。9月にルイ16世とマリー・アントワネットの臨席のもと、製紙業者のモンゴルフィエが絹布を紙で裏打ちした直径33mの熱気球に成功し、11月には人が搭乗してブローニュの森から8kmを飛行しました。[Steam Balloons]
モンゴルフィエが熱気球で飛んだ翌月には、シャルルとロベールが、直径8mの水素気球シャリエール号で、2時間の飛行に成功しました。early flight

1立法mのヘリウムガスは大気中で約1kgの揚力を発生します。アドバルーンは、膜厚0.2mmの塩ビフィルムを張り合わせて作りますので、直径が2mより小さいと、体積であるヘリウムガスの浮力よりも、表面積である塩ビフィルムの自重が重くなるために浮上できません。

1863小説「気球に乗って五週間」

1980 1878


現代の実用的な飛行船は、全長50m 直径14mのヘリウムガス室の内部に配置した、空気室で飛行船の浮力を調整します。空気室を縮小させると、飛行船の浮力は大きくなり浮上します。この方法は、潜水艦や魚類の浮力調整の方法と同じです。

アンリ・ルソー1908年作「セブレスの橋の風景」の背景に描かれたツェッペリン号は、帆布を被せた全長130mのアルミニウムの骨組の内部に、水素を充填した17個の風船を配置した巨大な飛行船です。しかし、1937年に全長245mのヒンデンブルクが 着陸時に爆発炎上し、危険な水素の気球は終焉しました。
1970年に建築家集団アーキグラムは、浮遊する都市「インスタント-シティ」のアイデアを発表しました。
同じ年にバックミンスタ・フラーも「浮かぶ球状都市」のアイデアを発表しました。直径を5kmに拡大した巨大なジオデシックドームが、日の出の太陽光によって内部の空気が暖められ、浮力が生じて上昇するというアイデアです。
Solar Balloon
直径800mアルミニューム製のジオデシック球

雲の質量
うろこ雲やいわし雲:0.05g/1立方米
入道雲:1g/1立方米。底面積が5km平方x高さが10kmの入道雲は総重量は25万トン(大型のタンカー1隻分)秒速10m以上の上昇気流
物質の質量:素粒子の周波数と密度