今日の版画芸術(プリントアート)は、従来の木版画や銅版画といった伝統的な版画技法にとどまらず、写真、デジタル、アートブック、グラフィックデザインなど、多様なプリントメディアの領域へと大きく拡大しています 。しかし、社会一般における「版画」の認知は、依然として限定的です。
このギャップを解消し、版画が本来持つ多様で豊かな作品の広がりをより正確に表すため、絵画学科版画専攻の名称を、2027年4月から 「版画・プリントメディア専攻」へと変更いたします。
※英語名称は「Printmaking and Print Media Course」となります 。
※2026年度以前の在学生(同教育課程への3年次編入含む)は、「版画専攻」から変更はありません。大学院(修士)は、2027年度入学生から「美術研究科絵画専攻 版画・プリントメディア研究領域」に名称変更します(在学生の取り扱いは、学部生に同じ)。
「版画・プリントメディア専攻」における3つの学びの領域
「版画・プリントメディア専攻」では、以下の3つの学びの領域を通じて、伝統と共に先端に拡がる版画の可能性を探究し、アートとデザインを横断しながら独自の視点で思考できる人材を育成します。
1.版画領域 | Printmaking Area
木版 | Woodcut
銅版 | Intaglio
リトグラフ | Lithography
シルクスクリーン | Screenprinting
2.プリントメディア領域 | Print Media Area
写真 | Photography
デジタルプリント、デジタルファブリケーション | Digital Printing and Digital Fabrication
コピー、コラージュ | Photocopy and Collage
版画の拡張領域、ミクストメディア | Expanded Print Media and Mixed Media
3.アートブック領域 |Art Book Area
アーティスト・ブック、ブックアート | Artists' Books and Book Arts
グラフィックデザイン、イラストレーション | Graphic Design and Illustration
学科長メッセージ
版画専攻 学科長
大島 成己 教授(版画・写真)
「版画」の概念を更新し、新たな「プリントメディア」の地平へ
これまで、本専攻の英語名は他大学に先んじて「Graphic Arts Course」を採用してきましたが、日本語名称では意図的に「版画」という言葉を残してきました。それは、浮世絵をはじめ世界に誇る日本の「版画」を受け継ぎながらも、今日的な可能性に向けてその概念を更新したいという強い思いがあったからです。
「版画」という言葉が時に古めかしく感じられるとすれば、それは版画の持つ本当の可能性が旧来のイメージに閉じ込められ、一般化されていないからに過ぎません。言葉や概念は、時代の流れとともにアップデートされるべきものです。私たちはここから逃げたくないのです 。あくまで「版画」の伝統に向き合いながら、写真やデジタル、アートブックなどを包括する「プリントメディア」として捉え直すことで、版画の概念そのものを更新したいと考えています。
デジタルとアナログの往還が切り拓く、新たな「版画・プリントメディア」の可能性
その更新の一つが、私たちが生きるデジタル時代における「プリントメディア」の可能性に繋がっていくでしょう。日々の生活で、情報はモニター上のデータとして消費されていますが、プリントメディアは、デジタルで処理された情報を単なる視覚情報にとどめず、どのように手に触れるものとして形にし、それを空間に配置するかを探求するメディアです 。デジタルとアナログを自在に行き来(往還)しながら、視覚だけでなく触覚、空間感覚を伴う体験へと展開することの重要性が、昨今の情報社会において改めて見直されています。
こうしたメディアと身体性に関わる現代的な問いに密接に結びつく「プリントメディア」の可能性において「版画」を捉え直すこと。その明確なベクトルを示すものが、今回の専攻名改称となります。私たちは、日本の文化遺産としての版画を受け継ぎながらも、「版画・プリントメディア」の今日的な広がりへと開かれた教育研究に向かっていきます。