
東京都世田谷区の商業施設・玉川高島屋S.C.の南館アトリウムガーデンリニューアルにあわせ、2015年大学院彫刻専攻修了のアーティスト・勝木杏吏さんによる金属彫刻作品「ハナミズキ ―空―」「ハナミズキ ―川―」が設置されました。本プロジェクトは、卒業生の作家活動を支援すると同時に、地域の子どもたちと共に作品を創り上げる「共創」のプロセスを通じて、美術大学が持つ専門知を地域社会へ還元する取り組みです。
地域のシンボル「ハナミズキ」を介した造形体験と作品に込められた願い
作品制作の柱のひとつとなったのは、勝木さんが指導を担当した小学生とその保護者による造形ワークショップです。モチーフに選ばれたのは、二子玉川の駅前通りに植樹され、地域のシンボルとして親しまれている「ハナミズキ」です。参加者は「花のつぼみ」をテーマに、金属の性質を学ぶ座学から鋳造の見学、研磨まで、彫刻の専門的な工程を実体験しました。
こうして子どもたちの自由な発想から生まれた数々のつぼみは、勝木さんの手によって連作アートへと昇華されました。南館アトリウムガーデンの各フロアに設置された「ハナミズキ ― 空 ―」および「ハナミズキ ― 川 ―」には、子どもたち一人ひとりが憧れに向かって花を咲かせられるようにという願いが込められています。
地域社会における美術大学の役割と価値
本プロジェクトのような社会連携活動は、単なる施設装飾を超え、多層的なポジティブな影響を社会に与えます。まず、商業施設という日常の場に、地域住民が制作に携わった作品があることで、街への愛着は文化的な誇り——シビックプライドへと昇華されます。また、本学が培ってきた専門的な技術や「正解のない問い」に向き合う創造的思考を、企業のSDGs活動や地域教育に適用することは、持続可能な社会形成への貢献にもつながります。
さらに、社会とのリアルな接点を持つこうしたプロジェクトは、将来のアーティストやデザイナーを目指す受験生や学生にとって、美大で磨く感性と技術が確かな社会貢献へと結実するプロセスを可視化し、表現者が社会で果たすべき役割とその活躍のフィールドが、社会へ地続きであることを示す実例となります。
多摩美術大学は、今後も芸術の社会実装を推進し、クリエイティビティが持つ多様な可能性を社会のあらゆる場所へ広げていきます。


