拡張ソングミュージック
のえのん
作者によるコメント
レコードには音溝と呼ばれる微細な溝が刻まれており、針が触れることで音が再生される。しかし傷や埃によって生じるノイズを経験した私は、その微小なノイズが新たな音楽を生む可能性を持つと感じた。そこで溝をニードルで引っ掻いたり、絵の具で塞ぐことで音を意図的に変化させる制作を行った。音と彫刻の融合をテーマとしてきた私にとって、本作は大学入学後初の個展で発表した、パフォーマンスを含む表現の広がりを示す作品である。ミクロな溝を彫刻することで、レコードは再生の度に異なる音を生成し、複製を前提とした本来の機能から逸脱する。本作では直径90cmの巨大なレコード3点と、そこから生まれた音楽とパフォーマンス映像を並置し、複数の音が同期する空間を構成している。
担当教員によるコメント
関係ないが、私の抱く「東京の美大生」のイメージは前野とぴったり重なる。カラフルで変幻自在、サンプリング空間にいるかのようである。YouTuberの顔も持つ前野は、持ち前のアンテナと好奇心で、エッジの効いた良作を4年の間に多数生み出した。デジタル機器を使いこなす前野が、軸足を彫刻に定めているのがまた憎い。本作はアナログレコードを素材としているが、レコードを後生大事にしていた世代は胸をえぐられる。熱で溶かされた表面がケロイドのように盛り上がり、それが発するノイズは、過去のミュージシャンの悲鳴のようだ。このスレスレの暴力性が前野の持ち味である。この作品、おばけアンプを使えばいくらでも爆音にできる。また、以前作った3Dプリンター作品はもともとサイズが抽象的である。眼前にある作品のポテンシャル(変容可能性)が、違うスケールで迫ってくる。
教授・高嶺 格
- 作品名拡張ソングミュージック
- 作家名のえのん
- 素材・技法レコード、スピーカー、映像、etc.
- サイズサイズ可変
- 学科・専攻・コース
- カテゴリー
- 担当教員

