そこにあるとき

山口 凛

作者によるコメント

彫刻作品をつくる上では、どんなに軽量な素材でも重力との関係を断つことは不可能だ。今回の制作は、物理法則の中で風船をモチーフとした構成を行い、視覚的に重量のある石を浮かせ、柔軟な風船で石を支持させる試みである。

担当教員によるコメント

大理石とFRP樹脂で模られた風船が交互に重ねられ絶妙なバランスで成立している作品。素材の対比と構成、風船の潰れ加減の妙で、作品全体が軽く浮き上がる。その影響は、周囲の空間の重力をも弱め、手前に立っているこちらまで浮き上がるような錯覚を起こす。少し距離を取り歩きながら眺めると景色が変わってくる。素材の関係性は骨と関節軟骨を感じさせ、並置された二つの作品がゆっくりと起き臥すときの膝関節の一連動作に見え、立つことと重力の関係性を強く感じさせるなど、根幹的なテーマでもありながら、観客の想像力を働かせ豊かな連想を広げさせる余地を巧みに作ることで、見立てることの楽しさを存分に伝えてくれている。

准教授・髙山 陽介

山口 凛 《そこにあるとき》 | 多摩美術大学