カニカマの野望

柿澤 希美

作者によるコメント

「こうしたら面白いんじゃないか」
カニカマという素材と出会ってから、あれこれ試すうちに、この作品は生まれました。

4年間の集大成として、深い意味や意義があるものを作らねばと悩むこともありましたが、意味を与えることよりも、面白いと思える感覚を信じて制作しました。
「意味は無いけど、面白い」を追求することもまた、意義のあることだと私は思います。

周囲の人たちと面白がりながらアイデアを膨らませていった時間が、私にとっての財産です。

担当教員によるコメント

柿澤は深く深く悩んでいた。統合デザイン学科らしくインテリジェンスある白い形態ではなく、そもそもカニカマでいいのか?軽くて深みがないのではないかと。なんのことはない。全く問題ない。
「カニカマでいけ」と背中をおすのが柿澤にできたただひとつのことだった。意味深で実はそこまで意味がないもの、センスよくみせかけて実は大した内容がないものって意外と多い。
AIに評価させたらお世辞を言いそうだけど、全然信用ならないことも多い(むしろほとんどがネットに転がってる無責任な嘘っぱちの組み合わせ)。
人間の目は相対的に環境などを踏まえて判断するものだし、マーケティングがどんなにすぐれていても名作の椅子ができるわけないだろ。
カニカマってそもそもカニではないからこそ、深く悩み、野望と称していろんなものに憑依したい、赤と白だから東京タワーにだって変形したいというコンセプトは荒いかもしれないが
柿澤の造形力はすべてを消し去るパワーがあるのを知っている。クラフトはAIを凌駕する。人間はプライドをもってAIと戦う必要があるし、心配する時間すらもったいない。
秋が深まった頃、涙をぽろぽろ流して悩んで手が止まっていた柿澤はある朝、再びカニカマによる精巧な造形を追求を再開し始めた。世界でカニカマについてあんなに考えていたのはたぶん柿澤だけだろう。
他人や教授の目を気にしすぎていた時期を経ていい意味で「自分はカニカマがすきだ。なにか?」という「開き直った強いパワー」こそがクリエイティブには大切なことなのを完全に理解したのだった。
教養のある教授の中には失笑もあったかもしれないが、なんのことはない。このパワーは今しかできないし、柿澤にしかできないし、やり切った姿勢こそ自分は逞しいと思った。
TOP23おめでとう。柿澤のビジュアルへの追求と「これでいいのだ」と全肯定する姿勢は後輩に強いパワーを残した。
さあ、柿澤のストーリーはこれからまた始まる。自分に自信をもっていけ。密かな野望を大切に抱えてデザインのスターに憑依していけ。 

教授・佐野 研二郎