思い込みの形

キム ガヒョン

作者によるコメント

ゲシュタルト現象とは、人が断片的な情報を無意識に補完し、全体として理解しようとする認知の働きです。本作では、この補完作用が視覚認知に限らず、日常的な会話や文脈理解の中にも現れている点に着目しています。たとえば料理について話すとき、私たちは経験をもとに使用される道具を自然に推測します。このように、人は不足した情報を前提や状況から補いながら意味を構成しています。本作品では、意図的に設けた「情報の空白」が、周囲の文脈や視覚的手がかりによって成立する過程をアニメーションによって可視化しました。

担当教員によるコメント

「食べる」という一見単純な行為の中には、手の所作・食器の働き・食材とのインタラクションといった細やかな現象が、幾重にも織り込まれている。

彼女のアニメーション作品はこの「手-食器-食材」系の中間・結節点となる「食器」の存在をあえて描写から「抜く」ことで、ふだん意識することのなかった、手の細やかな所作や食材の物理現象の豊かさをありありと顕在化している。
我々の行為は如何に道具によって拡張されているか、また逆に、如何に道具によって規定されているか。道具と人間の関係について改めて気づかされる作品である。

教授・中村 勇吾

キム ガヒョン 《思い込みの形》 | 多摩美術大学