Unsubstantial Silhouette

佐々木 桃佳

作者によるコメント

一つに繋がった装置の途中の機構を影のみで演出した作品。
影は「そこに物体がある」ということを想起させる。私たちは、与えられた情報を元に、勝手に頭の中で「補って」しまうことから逃れられない。実体がなく影のみ存在する場合、鑑賞者は影から物体を想像で補うだろう。
この作品を通し、影の与える実体感や、物体はないが先の装置が繋がり動いていく違和感の、反する二つの感覚を同時に感じてもらいたい。

担当教員によるコメント

作者の佐々木桃佳はこの作品の前に、人の顔を媒体にその様相が変わっていくダイナミックプロジェクションマッピングの作品にも取り組んでいた。「Unsubstantial Silhouette 想起させる影」との共通点は、リアルな物体へ投影することで、現実と虚構を曖昧にし「不思議な世界」を作り上げる点である。そして佐々木は同時期の制作課題で2 本の古着のジーンズをセンターで切り上下反対に繋ぎ合わせたワイドパンツも制作した。これもある意味「不思議な世界」の再構築とも言える。これらは佐々木自身の遊び心とセンスから生まれた作品ではあるが、一番は佐々木自身が見てみたい世界でもあるだろう。これからも多くの魅力的な「不思議な世界」を生み出し続けていくことを大いに期待したい。

教授・宮崎 光弘